歯科インプラント治療が一般的な治療方法として認知されるようになってから長い年月が経過しましたが、それと同時にインプラント関連のトラブルは日本だけでなく世界中で報告されています。
医学的に残念な結果になっているものもあれば、患者様の過剰な期待などの心理的なことが原因となっているトラブル、種類は様々ですが何かとメディアでも取り上げられ批判的な意見が散見されるようになってきています。
最近では国民生活センターでも注意喚起を行っており、治療に対する一定の理解とトラブル回避を行えるよう情報提供が行われています。
どうなのでしょうか?
インプラント治療の是非については考え方も様々ですが、昔とは異なりギャンブル的な要素はかなり少なくなっていると感じます。治療方法も確立してきていますし治療におけるガイドラインも根拠を持ったものが多くなってきています。
担当医の知識、技術不足は論外ですが専門医でなければ安全に施術できないという事は無いと思いますし、困難なケースは専門医が行ったとしても失敗するリスクは高くなるものです。
専門医は専門家としてその分野のスペシャリストですから、その技術を患者さんに還元できる点では有利だと思いますが、インプラントの成功は手術だけではなく被せ物や咬み合せ、周囲の環境、メンテナンスが非常に重要ですから周辺の状況も併せて管理、計画していくことが大切です。
トラブルの多くはインプラントだけをとにかく行って、後の事は知りませんといった「やりっぱなし」のケースが多く、やはりトラブル対応やそのリカバリーもそのクリニックの力量を図る指標となって然るべきだと考えます。(インプラントに限らず全ての治療に言えることですが)
医療である以上100%成功するという保証は無く、多くの症例を手掛けていれば自ずと上手くいかないケースも発生してきます。今まで失敗したことがなく全て100%成功しているとなると、経験が相当に少ないと判断せざるを得ませんし、失敗経験のない歯科医師に施術してもらうことは危険であることは間違いありません。
当院でも「骨に生着しない」「予測よりも歯茎が下がる」「上顎洞にインプラントが落下する」といったトラブルは起こることがあります。攻めた高度な治療をしようとすればこう言ったトラブルは起きるものですし、反対に誰がやっても上手くいくケースもあります。一括りにインプラントの成功率などで比較検討するのはいかがなものかと思います。
インプラント治療を受ける際には現在の骨の状態や全身状態、担当医の経験や技術的な部分、上手くいかなかった場合の保証、アフターフォロー、メンテナンスなど費用以上に考慮すべきポイントが多くありますので、これからインプラント治療を検討している方は上記の点を参考にクリニック選びを行うことをお薦めします。
最後の最後は「信用に値するクリニックか」など相性的な部分もあると思います。上手くいけばもちろん最高ですし、上手くいかなかったときでも逃げないでキチンと向き合ってその後の対応を一緒に考えてくれるクリニックと出会えることこそが最も大切な要素なのかもしれませんね。
2023年10月加筆・修正
Y.ODA