自分の健康には無頓着な方でも、子供のこととなると小さな変化にも不安を抱いてしまうのではないでしょうか。子を持つ親として、私もその気持ちは痛いほど理解できます。お医者さんに行っても先生によって言うことが違ったり、雑誌などを読んでみてもこれまた違うことがズラズラと並んでいるのが現状です。現在ではインターネットという情報ツールがあるものの、どれが正しい情報なのかを選択することは失礼ながら医療に関して素人である親御様にとっては不可能と言ってよいでしょう。
そんな中でおだ歯科クリニックが出来ることは、なるべく処置をする範囲を少なくして最終目標を「きちんとした永久歯列の獲得」に設定し経過を追っていくことです。具体的なことに関しては実際に診察してみなければ分からないことも多いのですが、例えば虫歯ひとつとってみても「虫歯だからすぐに削って詰める」という行為が必ずしもその歯にとってベストな処置ではないことも従来からの研究で明らかになってきております。
良い小児歯科とは
当院、おだ歯科クリニックではお子様の治療は保険診療を前提に、また歯科医師・歯科衛生士と共に担当制にて治療や予防に当たらせて頂いております。
当院ではお子様の歯列矯正をきっかけに通院される方もいらっしゃいますが、以前から小児歯科に通われていて、ご家族と歯科医師らが連携してお子様の歯並びにも注力し、矯正治療をいつからすべきか?などを相談し、一人ひとりのお子様に適切な時期に矯正治療をご提案させて頂いております。
また、昨今ではMFT(口腔筋機能療法)と呼ばれる口腔習癖を改善するトレーニング法もあり、お口周りの筋肉や使い方を直すことで正しい発音、鼻呼吸、正しい滑舌などを習得し、永久歯が正しく生えるよう促すことも可能です。
常にご家族とお子様と歯科医院が連携して、正しい発育と口腔環境に貢献できればと考えます。
子供の虫歯の罹患率
子供の虫歯の罹患率は何割くらいだと思いますか?
むし歯の罹患率は下表に示す通りです。
この結果によると、幼稚園では26.49%、小学校では39.04%、 中学校では30.38%、 高等学校では39.77% 、
というデータが出ました。
また年齢別に見ると 8歳児の罹患率が46.03%と最も高く、ついで 9歳(45.9%)、 7歳(40.26%)という結果でした。
2022/07/19 厚生省
かかりつけ歯科医を持つ
小児歯科という診療科目において、今までのようにむし歯や歯周病、歯並びや咬み合わせ等の治療から、子どもの口腔機能疾患の診断、訓練、治療に至るまで歯科の割合は大きく増えるとともに変化しています。
小児歯科学会の見解においても、多様性の時代にお子様の治療、他の医療機関と連携するためにもかかりつけの歯科を持つことは強く推奨されております。
お子様の歯と成長を見守るために
かかりつけ歯科医を持つ重要性は前述にてご説明しました。次に大切なことをご説明します。
定期的に歯科に通う
- ~マタニティ期間前後~
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- 小児歯科における定期検診は、お子様を持つ妊娠前のお母さんご自身がかかりつけ歯科医を持つことが重要です。
- 妊婦さんの歯科検診は任意ですが、必ず受けるようにしましょう。
- 出産前と出産後、ご自分と家族とお子様のかかりつけ歯科医は統一することを推奨します。
- POINT・問題点
- 妊娠中の歯科医療の問題と課題は、母体内で形成されるお子さんの歯が健全に発育するために、出来れば妊娠前に歯科疾患は治療しておくことが望まれます。
しかしながら、妊娠中の体調の変化やホルモンバランスの変化で妊娠中に虫歯や歯周病が悪化してしまうことが多いのが現状です。
また、地域保健センターや保健所等で母子健康手帳交付時に歯科保健指導などがありますが妊娠前の歯科治療の啓発はまだまだ根付いていないのが現状です。
- ~ 乳幼児期(保育所・幼稚園)~
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- かかりつけ歯科医を持ち、3か月に1度程度は定期検診に通いましょう。
- むし歯菌、歯周病菌は家族や大人から感染します。
- 「ながら食べ」「ながら飲み」はやめましょう。
- POINT・問題点
- 乳幼児期の1歳6か月児歯科健診では乳幼児のう蝕率(むし歯)は少ないのですが、3歳児歯科健診におけるう蝕率は非常に増えているデータがあります。
また保育所・幼稚園での嘱託歯科医の配置による歯科健診が定着してきているため、歯科健診で何も指摘されない場合には「かかりつけ歯科医師」を受診しないことも多いのが実状です。
- ~ 学童期(小学校)・思春期(中高校)~
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- 学校での歯科検診を受けても定期検診を受けましょう
- 長期休暇の始めに歯科検診を受けましょう
- POINT・問題点
- 小中高等学校では年に1〜2回の歯科健診を実施していますが集団歯科健診では精密な診断ができない場合もあるため、むし歯が重篤化する例もみられることがあり、「かかりつけ歯科医師」による定期的な歯科健診や必要な治療を行うことが必要です。
食生活のバランス・リズム
どうして歯科医師や歯科衛生士さんは『3度の食事を中心に、おやつの回数は1日1回を目標にしましょう』と言うのでしょうか?
「甘い物に限らずどのような食べ物や飲み物でも、回数が多くなったりダラダラといつまでも飲食したりしないように注意しましょう」と言うのでしょうか?
答えは歯の再石灰化にあります。
時間を決めて食事やおやつを食べている場合
だらだらと食べている場合
脱灰と再石灰化
食べ物を食べるとお口の中は酸性になります。
お口の中に潜むミュータンス菌などが食べ物の糖を取り入れて歯を溶かす酸を出すからです。これにより歯に含まれるミネラルの一種であるカルシウムやリン酸が溶けだしてしまいます。これを脱灰(だっかい)と言います。
ただ、お口の中は食べ終わった後、口腔内はアルカリ性の状態に戻ろうとします。唾液の働きで溶けだしたカルシウムやリン酸は再び歯に戻ろうとするのです。
これを再石灰化(さいせっかいか)と言います。
食後の歯磨きやフロスはブラッシングにより食べカスをきれいに除去するためであり、歯磨き粉は歯をきれいにすると共に、その中に含まれるフッ素成分などが再石灰化を促進します。
ですので、時間を決めないでジュースやお菓子をお子さんに与えるという事は、むし歯を作る手助けをしていることになるのです。
ミネラルとは
ミネラルとはヒトのカラダを作り運営するための栄養素の1つで、カルシウムやリン、亜鉛やカリウム等の総称です。
その中でも歯に含まれるカルシウムやリンは食べ物を摂取するたびにお口の中に潜むミュータンス菌などの虫歯菌によって溶けてしまいます。これを脱灰と言います。
- 歯や骨をつくる
- 電解質として浸透圧を調整する
- 神経や筋肉の機能を調整する
その他に、体内で様々な役割を担う有機化合物を構成するものや、
酵素やホルモンの作用に関与する『微量ミネラル』(鉄・亜鉛・マンガンなど)があります。
歯磨きとフッ素塗布
乳幼児や小学校低学年くらいまでは、ご家族の方によるお子さんの歯磨きケアや仕上げ磨き、チェックが必要です。
また、奥歯などの乳歯はやわらかく歯の溝からむし歯になりやすいので溝を埋めるシーラントや、虫歯予防のフッ素塗布によるコーティングを行うことも歯科では行っております。
プロケアである歯科衛生士による、歯磨き指導やお子さんのお口の中の情報の共有は定期的な検診とかかりつけ歯科医を持つ重要な役割と言えます。
また、フッ素入りの洗口液などはブクブクうがいが出来るようになってから始めますので歯科衛生士から練習方法などを受けて下さいね。
メンテナンスを受けた方からのご質問
検診後の学校検診で「虫歯」と判定されました。
学校検診では以下の状態を全て「虫歯」と取扱っております。
A : 虫歯になりそうな歯牙
B : 表面に白濁のある歯牙
C : 明らかに穴の開いてる歯牙
D : 抜けそうな乳歯
従って「虫歯」と判定を受けたことと実際に削る治療が必要かということは一致しません。当院では表面的な問題解決のためにむやみに歯を削ったり、乳歯を早期に抜歯したりということを行いません。明らかに治療などが必要な場合には、こちらからご案内させて頂きますのでご安心下さい。
また、長い期間の経過を追っていくことで、そのお子様が虫歯になりやすいのかそうでないのか、これが進行していくタイプの虫歯なのかそうでないのかなどを総合的に判断できます。学校検診では過去の状態からどう変化したかは当然分からない訳ですから、自ずと診断の違いが生じます。大切なのは「病名を付けること」ではなく実態を把握し本当に必要な場合に限り医療介入(投薬を含む)をするという姿勢だと考えておりますので、どうかご理解の程宜しくお願い申し上げます。
「咬み合せに問題あり」と判定されました。
これも虫歯と同様判定基準があいまいなことが混乱を招いているようです。検診担当医の考え方次第で、検診結果が大きく異なる領域でしょう。矯正学的な見方をすると、ほぼ全ての方が「咬み合せに問題あり」となってしまいますし、日常生活に支障が出ていなければ問題無しと言われればそれもまた真実だと思います。
咬み合せや歯並びが悪いと言うと、すぐに「歯列矯正」を想像されると思いますが、本当に治さなくてはいけないものなのかをよく考える必要があります。それぞれの患者さまにとって求める健康状態や見た目の美しさは大きく異なる訳ですから、検診で取り上げられる歯列不正の有無には大きな意味を持たないと考えて良いと思います。(無意味ではありませんが)
当院にお越しになられているお母様方は、お子様のお口の健康への意識が高く、それだけに検診結果が気になってしまうだろうと思います。そういったご家庭で育っているお子様はむしろ安心しております。学校歯科健診は一つの目安と考え、当院での診断や診療方針などについて疑問や不安がある場合には遠慮なくお申し出下さい。
また、他院にてセカンドオピニオンなどを取るのも良いかと思います。その際には当院で保管してありますレントゲンや写真などのデータをプリントし出来る限り協力させて頂きます。